リフォームや建物修繕による相続税対策
相続税対策として、まずは相続財産を減少させる必要があります。
ただ財産を無駄遣いするのでは意味が無いので、
相続財産を減少させつつ、それを可能な限り相続人に移転するか、
または、相続人のメリットになるように形を変えておくことが好ましいといえます。
この考えから、リフォームや建物修繕は相続税対策に有効といえるでしょう。
リフォームや建物修繕による節税効果
相続財産の減少
建物の所有者がその所有建物をリフォームや修繕した場合、
通常、工事費用として支出が生じることになります。
その結果、現金や預金が減少するという形で、
相続財産の減少をもたらすことができます。
また、リフォーム費用をローンで調達した場合には、
その分、借入金というマイナスが増えるため、
それによっても相続財産の額を減少させることができます。
相続人のメリット
被相続人が建物をリフォームや修繕をしないまま亡くなった場合、
その建物を相続によって取得した相続人が、
その建物に居住、又は賃貸するには、
自らリフォームや修繕を行う必要があります。
そうすると、せっかく建物を相続したのに、その修繕のために
かえって費用の持ち出しになってしまうということがあります。
これに対して、被相続人が建物をリフォームして設備を最新のものにしたり、
不具合を修繕しておいたりすると、
将来的に相続が発生した場合に、相続人は設備が整い、
修繕の必要のない状態で、建物を取得することができます。
その結果、相続人は自ら居住するにしても、他人に賃貸するにしても、
その相続した建物を直ちに有効に活用することができるようになります。
相続人に対してのメリットが大きく、実質的にはリフォーム費用等を
被相続人から相続人に贈与したのと類似した効果が得られることになります。
リフォームによる建物の評価額
従来(平成25年の税制改正前)においては、
リフォームを行った場合でも、建物の面積が増加した場合などを除いては、
建物の評価額が上がるということはありませんでした。
そのため、建物のリフォームは、相続対策としてかなり有効な手段とされていました。
しかし、税制改正後には、リフォームをした場合、
そのリフォームした部分の評価額を加算して、物件の評価をすることとされました。
その増加額は下記になります。
- ①、「当該増改築等に係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、
- その付近の家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額」とされます。
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- ②、類似した近隣物件がない場合には、リフォーム等に要した費用から償却費相当額を控除した
- 額の70%相当額が増加額として判断されることになります。
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維持修繕による建物の評価額
なお、リフォームといっても通常の維持修繕費で、
元の価値より高くなるような改修費でなければ、
上記のような70%評価までの計算をする必要はありません。
通常の外壁の補修や屋根の雨漏り修復など
- ・破損箇所の原状回復工事
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- ・建物を維持するために不可欠となる定期工事費
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- ・経年劣化した付帯設備の交換
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- 上記のような工事は、現状維持のための修繕費として取り扱うことができます。
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固定資産税評価額の評価替え
住宅をリフォームした際に、相続税をできるだけ減税するための手法として、
固定資産税評価額の評価替えを行ってもらう方法があります。
相続税額を計算する際にリフォーム費用を加算すると、
場合によっては税金が高くなるケースがあります。
例えば、築年数が古い家のリフォームを行い、リフォーム費用を固定資産税評価額に加算すると
実際の価値よりも高く評価されるケースがあります。
そのため、リフォーム後の住宅の固定資産税の評価替えを依頼することで、
実際の価値を算定してもらい、相続税額を抑えられる場合があります。
おすすめの方法は、住宅の所有者がリフォーム後すぐに
固定資産税評価額の評価替えを自治体に依頼することです。
所有者が死亡してしまっている場合は、
相続税の申告期限よりも前に評価替えを依頼できるので検討してみましょう。
リフォーム後に相続税を申告する際の注意点
改修費用と修繕費用を明確に分ける
納税申告の際は、住宅のリフォームにかかった費用が
「改修費」なのか「修繕費」なのかを明確に分けておく必要があります。
支払った費用がどちらなのかを明確にしておかないと、
相続税額の計算に影響を与えるため、
曖昧にしないことが大切です。
税金に詳しい業者に工事を依頼すると、
施工内容がどちらに分類されるかより判断しやすくなります。
申告漏れがないように
住宅のリフォームを行った際は、必ず申告するようにしましょう。
”申告しなくてもわからないのでは”
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
税務署は貯金額の動きなどを照らし合わせて、
工事が行われた事実を突き止めます。
税金に関する申告漏れが発覚した場合は、
通常よりも高い金額を納めなければならなくなります。
税に関する申告漏れは、
ご自身だけでなくご家族にも迷惑がかかる場合もあるため、
忘れずに申告しましょう。